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女園秘書室-第79話-


崩壊していた福井家が、仲良く復活。どんないさかいがあっても、親子は親子。
そして、樹里は父より大人な対応を見せてくれました。
きっと、心から信頼や愛を欲しかったのでしょう。家庭はめでたく丸くおさまりました♪
そして、そして桃子と亜樹にも愛が芽生える?第79話です。


第79話

桃子はリビングを出た。
廊下に出ると、体全体を使って息を吐き出す。
父親がどういう態度に出てくるかも気になっていたし、樹里が父親を許せるのかどうかも心配
だった。自分なら、一発や二発殴っても気が済まないところだったが、桃子から見ると、樹里は
簡単に父親を許していた。
それは、父親という存在を本当に、心から欲していたからではないだろうか。
樹里には、たくさんのものが不足している。
家族、心から愛せる男性、打ち解けられる友人。
人は一人で生きてはいけない。誰かとつながって、ようやく自分の存在を確かめることができる
ものだ。
樹里が得ているお金や地位、名誉、仕事などは、実態はあっても心はない。心のないものにしか
関心を向けられないことほど、価値のない話はない。
桃子は、樹里を見ていてそう思ってきた。

樹里と父親は、桃子などそっちのけで、
「お父様」
「樹里」
と、必死に呼び合っていた。
何年か振りに会ったかのような行動に、苦笑いせずにはいられなかった。
ずっと近くにいたくせに。いまさら正面から向き合うわけか。
少しだけ、涙も出た。
桃子は、その間に入るわけにもいかず、リビングにいる意味を失って、静かに廊下に出た。
後ろ手にドアを閉め、その場に立ち尽くしている。

樹里の父親にしても、桃子からすると、あっけなく態度を崩してきたように見えた。
それほど簡単に過ちを認められるのであれば、なぜもっと早くに、自分からそうしなかったの
だろうと思えるほどだった。
その気持ちは、桃子には分からない。
もしかすると……。
「あたしの出番を待っていたのかい?」
桃子は、得意げになって肩を揺らして、クククと笑う。
「どうでもいいけど、帰るか」
ドアに背を向けて、二階へと続く階段に足をかけた。
「桃子さん」
廊下にはランプがともっていたが、普通の家の蛍光灯よりは、薄気味悪い暗いオレンジ色の
光を放っている。
ヌッとどこからか、亜樹が現れた。
「あなたって人は、ずっとあの場にいたのですか?」
怒っているのだろうか。何故だ?
首を傾げる桃子に、亜樹は突然ピョンと跳ねたかと思うと、首に飛びついてきた。
「うへっ」
桃子が奇妙な声を上げる。
「あなたって、最高ね」
桃子に抱きついた亜樹は、その勢いで頬にキスをする。
「おい、やめろ。あたしは女にそんなことされる覚えはないぞ」
「いやだ、桃子さんってば。わたしだって、そんな趣味ありませんわ。これは嬉野意味を込めた
挨拶ですのよ」

二人の声があまりにも騒々しかったのか、リビングのドアが開き、樹里と父が顔を出す。
亜樹の勢いに、のけぞる桃子。
「た、助けて」
右手を精一杯伸ばしてみても、みんなは笑うだけだった。
「仲が良くていいじゃない?」
「そうだな。それが一番だ」
父親が樹里の肩をそっと抱く。

「おぃ、違うだろ」
桃子の声だけが、この広い洋館の廊下にむなしく響き渡っていた。

-第80話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/10/29(月) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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