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No  576

女園秘書室-第56話-


ハイ。まだ飲み会まで行っていません^^;
桃子と樹里、二人の話は続いています。
本当の秘書になること、樹里を何とかしてあげたいということ。
この二つの決意を胸に秘め、桃子が一歩前に進もうとする第56話です☆


第56話

「今はそのすべてを五反田さんがしているんだな?」
桃子は、確認した。
樹里が頷く。
「同じことをわたしも沢渡さんもしています。そして、他の役員の秘書たちも同じ
です。桃子さんが出勤するとき、秘書室にあまり人がいないでしょ?皆さん、それ
ぞれの部屋に出向いているのです」
「分かった」
桃子は、何かを決意したようにはっきりと言った。
ただし、それをやらせてくれるかどうか問題だった。
翌週、桃子が朝早く社長室に行ったところで、有砂が果たしてどう思うかに不安がある。
「そんなことする必要ないですよ。桃子さんには、社長が襲われたときだけ活躍
していただければいいのです」
有砂は、そんな風に言いそうだ。
どうすればいい?
桃子は必死に考えた。

あたしだって、このままの状態は嫌だ。
最初は、社長の身を守るだけで高額の給料をもらえることだけが魅力的だと思っていた。
しかし、社長はしじゅう襲われるわけではない。そうすると、桃子の仕事はないに
等しかった。
それでも、社長の身を守るために、一日中社長と行動を共にする。そして、慣れない
英語や会議に四苦八苦する羽目になった。
それが今の現状だった。
何をしているんだ?
これでは、警備員時代と何も変わらない。変わったのは、給料が倍以上に膨れ上がった
ことだけだ。
何もしていないのに、これほどの対価を支払ってもらっていることが腹立たしい。
自分は案外真面目なのだ。桃子は、一人頷く。
「五反田さんと話をして、少し仕事を分担してもらえるように話してみるよ。あたしに
できることからね」
樹里は、ただ、
「頑張ってください」
とだけ言った。

夕方になり、二人はこの日初めて外に出た。
沈みかけた西陽で、庭の緑が艶やかに見える。音もなく通り過ぎる風が、樹里の
髪をふわっと持ち上げて、甘い匂いを桃子の鼻まで届ける。
香水か。まったく縁のない香りだった。それを真似ることが秘書に近付くという
わけではないけれど、「女」という部分でも樹里に教わる必要があるだろう。
桃子は、その匂いをぐっと吸い込み、むせた。
樹里が心配そうに振り返る。ほどよく香る上品さは、樹里だから似合うのだろうか。
すぐ近くにある愛くるしい顔を、桃子はまじまじと見つめていた。
努力しても手に入らないものもある。有砂や奈々の顔まで浮かんできた。
首を横に振って、すべてを打ち消す。
あたしは、あたしだ。
「大丈夫ですか?気分でも悪いのですか?」
「いいや、大丈夫」
桃子は、樹里の肩を二回ほど叩いて、歩き出した。
「桃子さん、痛い」
樹里が肩を抑えて、笑いながら追いかけてきた。

樹里が笑っている。
それを珍しいことだと思わなくなる日が来ればいい。
桃子は、心からそう思った。
ただ、本当にその日が来るまでには、樹里もいろいろなことを乗り越えなければ
ならないだろう。
樹里はあたしを助けてくれた。
そして、きっとこれからも助けてくれるだろう。
あたしも樹里を助けようじゃないか。
どこからか正義感が生まれてきたのを感じていた。

-第57話へ続く-
別窓 | 女園秘書室@小説 | コメント:4 | トラックバック:0
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