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笑@会社

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No  571

ある女の真実

5年ほど勤めた会社を思い切って辞めたのが、つい3ヶ月前。
やりたい仕事もなく、ダラダラと過ごしていた日々にさよならを告げた。

次に入社した会社は、新しいことだらけだった。
商品の設計でCADに初めて触れ、絵がとことん下手くそな癖に、手書きの設計図
まで書く。
ホームページを作る。
イラストレーターやphotoshopを使って、商品のパンフレットを作る。
商品知識を詰め込みながら、製造委託のために海外の企業を選定し、交渉する。
輸入する商品を選定し、販売代理店の交渉をする。

2ヶ月が経ち、ようやく2次元、3次元の設計をCADで出来るようになり、定規を
使わなくてもまともな直線が描けるようになった矢先、周囲で異変が起こり
始めていた。
それから1ヶ月。
随分悩んだ。最初は誰にも相談せずに、一人眠れない夜を何日も過ごした。
翌日会社だというのに、朝日が昇るまで眠れないこともあった。
それは、生活の中で重要なウエイトで支配されていて、ついには自分では支え
きれなくなっていた。

相方と親友だけに密かに相談をし、夏季休暇中、一つの決断を下した。
「わたしがやる」

夏季休暇が終わり、翌8月20日。
その日は、試用期間が終了する日で、同時に正社員として正式採用される日
だった。
ちょうど良いタイミングだったのかもしれない。
「会社を辞めさせてください」
朝早く会社に行き、経営者に直談判した。
事情が事情なため、経営者も止む終えず了承してくれた。

そして今日、たったの3ヶ月勤めた会社を辞めた。
来週からは、父の経営する会社に入社する。
今までずっと、関係ないと思っていた世界だ。
ずっと交わることのないと思っていた会社だ。

そう、これはあるわたしの物語。

人生は、何が待ち受けているか分からないものだ。
小説の登場人物の未来は、書き手に委ねられている。
書き手は、彼らの未来を知っている。
でも、実際の世界は、誰も自分がこの先どうなるかを知らない。

ただし……
小説の人物とは違って、自分で夢を描くことはできる。
これが生身の人間として生きている喜びかもしれない。
わたしは、これからどんな生活を描いていくのだろう。
キャンバスはまだ白い。



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No  558

女園秘書室-第46話-



樹里に誘われて、桃子初のお洒落スポットへ!!
本来なら、人について歩くなど、苦手な桃子が、ずーっと樹里に
くっついて歩いてます^^桃子〜、可愛いよ。
そして、あのときのいやーな思い出が蘇るお洒落カフェでの食事。
あぁ、今度こそ!!笑われませんように…。
桃子別の意味で緊張の第46話です♪



第46話

普段は決して来ないだろうお洒落な街を、桃子は歩いていた。
樹里が、一度アパートへ寄ってくれたので、下着や服を着替えることが
できて安心した。
私服などスウェットオンリーなので、少しずつ買い足していたスーツを
着て出て行くと、樹里は苦笑いだった。
「私服でいいんですよ」
とは言うものの、いきなりスウェットで出て行ったら、樹里は笑いはし
なかっただろう。
スーツははずれがない。いいのだ。
遊びで歩くには、少々窮屈なその格好で、ウィンドーショッピングを楽しむ。
樹里の行きつけの店が数店あり、彼女が少し店内を覗くだけで、店員が
出入り口付近まで駆け寄ってくる。
そして、桃子にも愛想のいい笑顔を向けてくれる。
最初のうちはむず痒い気分になったが、慣れてくると悪くないことだと
思えてくる。

調子に乗るなよ、あたし。この笑顔は、ただのあたしに向けられたもの
じゃないんだ。
樹里と一緒にいるからこそ、向けられているんだ。
そう言い聞かせる。
二時間たっぷり店を回り、樹里がランチをと駆け寄った店。
まるで本の一ページや、テレビのワンシーンを切り抜いたかのような場所。
通り沿いに小さなテーブルとイスがたくさん並んでいて、太陽の日差しを
浴びながら、数人が通りを眺めている。
たいていが、一人で座っている。もうすぐ昼休みになるという時間。
誰かと待ち合わせでもしているのだろう。読書をしている人、楽しそうに
携帯電話を耳に当てて笑っている人。
そこにいる誰もが、落ち着いていて、優雅で、そして自然に見えた。

二日前の悪夢が、桃子の頭によみがえる。
先に会計をするのは楽だけれど、メニューが決められず、いつまでもカ
ウンターに立ち尽くすのはうんざりだった。
ましてや、樹里が一緒では、手間取らないようにしなければならないと
いう思いが増していく。
店に入ると、桃子の不安をよそに樹里は奥のほうへ歩いていった。ちょうど、
通りと店内の境に位置する場所。
直接日差しがあたることがないのに、外の雰囲気が楽しめる明るい場所。
「指定席なんです」
樹里が笑うと同時に、店員が水とメニューを運んできた。
メニューは座って選べるのだ。
桃子は、嬉しくなって、にやついた。
メニューを開くと、そこには桃子をさらに喜ばせることがあった。
ランチのメニューは、全てセットになっていて、一つメインを選べば、
あとは自動的に飲み物やサラダがついてくる。
これなら、失敗などするはずがない。

店員が置いていった水をガブッと飲む。
「ゴホ、ゲ」
桃子は、むせながらグラスを目の前まで持ち上げた。
水じゃない、何かが口の中に入ってきた。
それは、酸っぱいような苦いような何かだった。
舌で潰して、感触と味を確かめる。
樹里がメニューで顔を隠して、肩を震わせて笑っている。
「ふふふ、桃子さんてば」
そういうと、こらえきれなくなったのか、声を上げて笑い始めた。
また何か失敗したのだろうか。
桃子は不安になって、グラスをテーブルの上に戻した。
グラスの中には、レモンが入っていた。
なかなか洒落たものを出すものだ。
しかし、樹里は何を笑っているのだろう。
桃子が首を傾げると、ようやくメニューの向こうから顔を覗かせた。
「桃子さん、こういうところあまり来ないんですか?」
どうして、樹里にそんなことが分かるのだろう。
不思議に思っていると、樹里は続けて言った。
「だって、レモン水だと思わずに、一気に飲んでむせているんですもの」

あぁ、そういうことか。
こういう洒落た店では、レモンの入った水を出すのが当たり前ということか。
また笑われてしまった。
そうさ、こういうところは慣れてない。
樹里には言ってもいいと思っていた。
本当の自分を見せることも。

-第47話へ続く-
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