樹里に癒される桃子を、最初のうち誰が想像したでしょう^^;
思っていたようなキツイだけの人じゃなかった?!
それとも、それは演技??まだまだ探りが必要です。
樹里の父との対面で、桃子はまたも新たな疑問を抱え込む?
自分自身の体調も気になるところ!
桃子にはまずは自分のことを気にして欲しい第45話!!
第45話自分ひとりでは食べる気もしなかっただろう。樹里との食事は、なかなか
面白いものだったと桃子は思っていた。
一人で食事をするよりマシとかいうのではなく、本当に心から楽しめたのだ。
樹里が淹れてくれた珈琲を飲んで、ソファに横になっていた。
寝込むほどの具合悪さはもうなくなっていた。桃子は、軽くシャワーでも
浴びたかったが、樹里は風邪をひくのではないかと心配し、今夜は濡れ
タオルで体を拭くだけにとどまった。
今は樹里がお風呂に入っている。
「あら、眠いのなら部屋に行ったらいかがですか」
仰向けになった桃子を、風呂上りの樹里が覗き込む。
長くカールした髪が桃子の鼻の一歩手前まで垂れ下がり、甘い香りが漂った。
その匂いは、次第に重くなり、桃子の体に充満していく。
「オンナ」の匂いというものだろうか。頭がクラクラするのは、具合が
悪いのではなく、この香りに毒されているのだ。
桃子は、男ではないけれど、男がこういう香りに惹きつけられるのが理解
できると思った。
樹里が自分の珈琲を淹れに行っている間に、桃子は姿勢を正してソファに
座りなおした。
「あら、大丈夫ですか?」
樹里がテーブルを挟んで向かい合うように座る。
「桃子さん、せっかく会社を休めるんですもの。明日どこかへお出掛け
しません?」
「へっ?」
桃子は、突然のことにかなり高音で言葉ともいえない言葉を吐き出していた。
桃子が驚いたのも無理はない。樹里も会社を休むのだということも知ら
なければ、樹里からどこかへ出掛けようなどと誘われるとは思ってもみ
なかったからだ。
「具合良くなったようにみえたので。明日、桃子さんを父の病院に連れ
て行くということで、わたしもお休みをいただいたんです。久しぶりだわ。
しかも、有給じゃなくて外出処理にしてくれるらしいの」
樹里は、遠足が待ち遠しい子供のように目を輝かせていた。
だからやっぱり憎めない。
桃子は樹里に対して、親しみさえ感じ始めていた。
念のため、病院にも行っておく。その後は、家で療養していたと言えば済む。
樹里の言葉に従って、翌日朝早くに桃子は病院を訪ねた。
樹里が、慣れた様子で受付を済ませてくれた。
「一番に回しておいた」
樹里が桃子の手を引いてくれる。
そういえば、樹里の父親には、昨夜会うことはなかった。
早く寝てしまったからだろうか。
母親にも会わなかった。
お礼くらい言わないと。
桃子は意外にも律儀な性格なのだ。
樹里の父親は、意外な人物像だった。
樹里のようなきっちりした性格で、微塵も隙を感じさせない子供を育てた人だ。
さぞかし、厳しい人なのだろう。そう思いながら、緊張気味に診察室に
入ると、そこには森の奥地で寝泊りしていたかのような、モッサリした
男性が座っていたのだ。
違う先生か。とも思ったが、
「桃子さんをお願いします。お父様」
樹里がそう言ったので、この森のおじさんが樹里の父親で間違いないのだ。
不思議な気分だった。
豪快に笑い、およそ「厳しい」とはかけ離れたような性格だったからだ。
桃子は、この先生、樹里の父親を見て悲しい気分になっていた。
「こいつの目、笑ってない」
外から見たら、ものすごく楽しそうに笑っているように見えるだろう。
でも、桃子は見てしまった。その瞳の奥に、何か不安や心配、悲しみを
抱えていそうな曇った場所があることに。
結局、桃子は、軽い疲労と、新しい職場に移って慣れないことでのストレスの
蓄積が、体調を悪くしたと診断された。
何か重い病気でなかったことは、良かった。
樹里も、胸を撫で下ろしたように、ホッとした顔を見せた。
そして、
「何でも相談に乗るから、何でも話してください」
などと、優しい言葉をかけてくれた。
筒抜けにならなければ、話したいことは山ほどある。
有砂や奈々、阿東に関係ないことであれば、少しは話してみようかと思
い始めていた。
そう、例えば、沢渡渚のことなんかを。
-第46話へ続く-
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
2007/08/22(水) 20:04:20|
笑@会社
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