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女園秘書室-第43話-



何の因果もありませんが、桃子、樹里のお宅に招かれました。
具合が悪いのに、緊張もして。これもまた試練です。
でも、樹里はいったい何者なのか、観察するチャンスでもあります!
早いところ体調復活して、樹里の真相に迫りましょう。
桃子、樹里宅で緊張の第43話!!



第43話

美しくも殺風景な部屋、桃子はなかなか馴染めずにいた。
横になるのも悪いような気がして、姿勢を正したまま樹里と向かい合っていた。
「ごめんなさい。わたし、気が利かなくて」
ときどきしてみた咳払いでようやく気が付いたかのように、樹里が立ち上がる。
「お部屋に案内します」
邸宅のほぼ中央に位置するだろう階段を上っていく。
二階へあがると、一本に伸びた廊下の両側に、数個ずつドアがついている。
一体、何室あるというのだろう。
桃子は、向かって左側の三番目の部屋に通された。
白を基調としたその部屋も、ベッドカバーがピンクや赤い花で彩られている
以外は、とてもシンプルなものだった。
「気に入っていただけたかしら?」
桃子が、ベッドの凹み具合を確認していると、樹里がさもおかしそうに、
くすくすと笑っている。
「はは、柔らかさがだいぶ違うから、寝れるか心配です」
桃子の体重では、沈みきってしまいそうなほどふわふわしたベッドだった。
隣の部屋だから、何かあったら呼んで欲しいと言われ、桃子は内線電話の
かけかたを教わった。
また、晩御飯の用意ができたら、この電話で呼んでくれるとのことだった。

樹里と隣の部屋か。何かと気を遣う。
隣からは、物音一つ聞こえない。
ドアが閉まる音が聞こえてきたので、隣にいることは間違いないだろうに。
外はすっかり暗くなり、明かりを点けていない部屋は、寝るのに最適だった。
フカフカ過ぎるベッドに身を預けると、重みでかなり沈みこむ。まるで地面を
突き抜けて、地球の裏側まで行ってしまいそうな気がしてくる。
樹里のこの親切は、何なのだろう。
本心から心配してくれているのか。それとも、何かたくらみがあってのこと
なのか。

どこからか涼しい風が入ってくる。
体が軽くなり、このまま風に乗って、どこまでも飛んで行きたくなる。
もはや体や頭の重さは、微塵も感じられなくなっていた。
「桃子さん、桃子さん」
誰かが遠くで呼んでいる。
心地よい声だった。誘われるかのように、地を歩くことなく、桃子はその声の
するほうへ移動していく。
突然風が途絶えた。
バサッ。当たり前のように、重力に負けて、桃子の体は地面に落下した。
「桃子さんっ」
部屋の扉が開いて、樹里が入ってきた。
桃子はというと、ベッドから床に落下していた。
食事の用意ができたことを知らせに来てくれた樹里。扉を開けたとき、
ちょうど涼しい風が部屋に吹いた。
桃子は心地よい夢を見る。起きそうもないと思ったのか、樹里が部屋の
ドアをそっと閉める。風は消えた。そして桃子の夢も消えた。というわけ
である。
「あたっ」
桃子は、先ほどは数キロも感じなかった体の重みを、感じていた。

階下に下りて、リビングに入る。
何の匂いか分からなかったけれど、美味しい匂いがする。
「吐いた後なので、さっぱりしたものをと思って」
テーブルの上には、おかゆと野菜スープ、サラダが置かれていた。
「リゾットにしてもらったんです」
リゾット?
桃子は、首を傾げた。
おかゆは、英語でリゾットって言うのかい?
リゾット、リゾット。
桃子は、頭の中で何度もその言葉を繰り返した。
いつか社長の前で使ってやろうと。
ただ、社長とおかゆを食べることなど、そうそうないだろうけど。

たった二人きりの食事が始まった。
テレビも点けず、何か会話をしないと、そこは無音の世界だった。

-第44話へ続く-

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/08/18(土) 08:12:53| 笑@会社 | トラックバック:0
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