笑@会社

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女園秘書室-第35話-



おやじドリンクで全快!!と思ったら、こんな日に限って、苦手な
英語のお仕事がやってきました。
それでも会社にいて、樹里や阿東と顔を合わせなくて良かったのかも。
この際、片っ端から知識を習得して、スーパーウーマンになってみる?
桃子新たな一歩の第35話です☆



第35話

会議は、予定通り正午に終了した。
時間ピッタリに行動する。社長は、特にそういう性格だ。
一分でも過ぎれば、苛立ちを隠さないし、一分早ければ、それを無駄に
しないよう、予定を前倒しするなり、他のことをして過ごす。
たかが、一分。されど、一分。
よく、呟くように言っているのを耳にする。
こんな生活、楽しいのだろうか?
桃子は、ときどき社長の横顔を盗み見る。
それは、たいてい誰かに囲まれているときや、車の中の移動中、社長が
目を瞑っているときだった。
血色のいい顔に、皺はほとんど刻まれていない。それでももう六十歳に
なるという。
桃子は、つい自分の父親と比べていた。
田舎でのんびりと暮らす両親は、六十を少し過ぎたところだが、顔には
木の年輪のように皺が刻まれている。
ほとんど帰省しない桃子であったが、たまに帰るとその数は多くなり、
桃子を悲しませた。
「これは、笑い皺だ。笑って暮らしてきたから、皺がたくさんあるんだ。
いつも怒っていてごらん。目は釣りあがって、皺などできない」
とは、桃子の父の言い分だった。
桃子は、外国の人たちと難しい顔をして話し込む社長を、斜め後ろから
眺めていた。

そのうち、会議室には冷たいペットボトルのお茶とともに、お弁当が運
ばれてきた。
いつもは人の世話ばかりしている秘書たちも、このときばかりは、総務
らしき女たちがすべてを準備してくれるのを黙ってみている。
そして、幹部社員たちとは離れた位置に移動した。
桃子たちが客という立場でここへ来ているので、待遇は良かった。
相手方の秘書たちが、気を遣っていろいろと話しかけてくれる。
桃子は、分からないことには、有砂の方を見て「助けて」という視線を
送り続けた。
そして、その回数は、自分が正直に答えた数より多かったのである。

取引先を出ると、桃子は会社へ戻るように言われた。
この後、もう一件外資系と呼ばれるアメリカが資本の会社へ行く予定で
あった。
「きみには、重大な仕事がある」
それだけ言い残すと、社長はさっさと車へ乗り込んでしまった。
有砂がそれを見届けて、素早く桃子にノートと資料を手渡してきた。
「いい話だったんです。これ、読めば多少は分かると思いますから、
レポートにまとめておいてください」
笑ったその目の奥。
以前のように、決して冷たい目ではないように見えた。
「あと数分で、迎えの車が参りますから、ここで待っていてください」
午後四時には会社へ戻ってくるとのことだった。それまでに、会議資料
としてレポートを作り、同じ秘書室のメンバーに配っておく。
その案件についての社内会議は、四時半から始まるとのことだった。

社長と有砂が行ってしまった後、間もなくして黒塗りのセダンの車が、
道路わきに静かに止まった。
運転席から降りてきたのは、黒いスーツをタイトに着こなし、隙など一
ミリたりともないくらいきっちりした女だった。
裾でくるくると巻いてある髪は、薄い茶色で、艶々していた。
あたしには、関係ない。
そっぽを向いた桃子に、その女は近づいてきて言った。
「新しい秘書の、花木さん。ですよね」

誰だい?
どうしてあたしの名前を知っているんだ?
そして、名前だけではなく、顔も知っている?
相手は桃子の顔と名前が一致しているのに、桃子は彼女の顔も名前も知
らなかった。
ただ、なんとなくこの声に聞き覚えがあったような気がした。
どこか安心するような優しい声。
思い出すまでに時間がかかったのは、この隙のない姿を見てしまったか
らかも知れなかった。

-第36話へ続く-


    2007/08/02(木) 12:00:00| 笑@会社 | トラックバック:0
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