笑@会社

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女園秘書室-第33話-



落ち込み激しい桃子。こんなの桃子じゃありませんっ!!
逃げるのか、立ち上がるのか??
燃え上がるのか…(ガンダム?!)
桃子が桃子でいられるのかが問われる第33話☆



第33話

「だよなぁ」
智弘は大きな声で笑っていた。
「桃子には、怖いものなし、敵なしだよな」
そこまで言われると、きつい。
むかしは、そう言われることが快感だった。
あたしは、誰にも負けやしない。自分の得意な分野では、絶対に負ける
ことは許されない。
不得意な分野には最初から手を出さないから、勝ちもないが、負けもない。
「びっくりしたけど、久しぶりに声が聞けてよかったよ」
桃子が一言も発しないのを、不思議に思うこともなく、智弘は一人で喋って
電話を終わらせようとしていた。
「あぁ、悪かった。女と一緒だろ?」
聞かなくてもいいことだった。知りたくもなかった。彼女であろうがな
かろうが、桃子の日常に、それは何の影響ももたらすことはないはずな
のだから。
それでも、桃子は聞かずにはいられなかった。
あたしの知らない女と一緒にいる。
智弘のこれからを知れる女。これからを知れない女のあたし。
「あぁ、ようやくね。できたんだ」
頭を何かで殴られたような痛みが襲う。
なんだ、この痛みは。
智弘との電話を切った後、桃子は布団に潜っていた。
寝ようとすればするほど、目は冴えていく。
カーテンの向こう側が、白けてくるのが分かった頃、桃子はようやく眠
りについた。

まぶたは腫れ上がり、微かに覗く白目は、白ではなく赤だ。
細かい赤い線がひび割れたように白目を覆いつくすさまは、お化け屋敷
のお化けをみるよりおぞましいものがあった。
こんな日も、会社は普通に営業する。人一人の体調など、関係ない。
「だったら、あたし一人がいなくても大丈夫じゃないか」
鏡の中の自分に言い聞かせてみる。
休みたくて仕方がなかったのだ。
それでも、スーツに着替えて、化粧を施す。結局逃れられることはでき
ないのだ。
社長を守ると約束した責任。
人の命が自分の手にかかっているとなれば、行かないわけにはいかない。
たいそう大袈裟なことを思いながら、桃子は重い足取りでアパートを後にした。

会社の最寄り駅まで来てから、桃子はまた悩んでいた。
ここから会社へ向かうべきか、向かわないべきか。
体調がおもわしくないことに変わりはなかった。それは多分、そのほと
んどが寝不足が原因ということも分かっていた。ただ、精神的な病みが、
ここへ来てまた桃子を襲ったのだった。
智弘とのことでショックを受けていて、忘れてしまっていた昨夜の出来事。
樹里と阿東の、修羅場らしい現場を見たこと。
それ以前からあった、変換事件の謎が振り出しに戻ったこと。
「ううぅ」
唸ってから視線の先に、見えた光景。
頭が禿げ上がった、もうすぐ定年を迎えそうな雰囲気の男が一人。
腰に片手を当て、上向きな姿勢。一気に何かを飲み干すと、売店の脇の
ゴミ箱に何かを放り込んだ。

あれだ。
桃子は売店に駆け寄り、商品を物色する。
栄養ドリンク。これで気合を入れるのだ。
桃子は、お世辞にも細いとは言えない足を肩幅に開く。先ほどの男同様、
腰に手を当て、天を仰いだ。
薬のような匂いが鼻をつく。薬など、ここ何年も飲んでいないので、むせる
ような感覚に捉われる。
それでも、はつらつとした背中を見せて歩いていく男を見て、桃子も一気に
それを飲み干した。

休むものか。
あたしは、そんなにヤワじゃないさ。

-第34話へ続く-


    2007/07/29(日) 08:00:21| 笑@会社 | トラックバック:0
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