笑@会社

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女園秘書室-第18話-


秘書室生活2日目に突入いたしました。
今日はいったいどんなことが桃子を待ち受けていることでしょう。
今日も多分、分からないことだらけ。そして、口に出せば、馬鹿に
されることだらけ。
それでも桃子は進んでいくのです。
そう、白旗の立派な社長秘書になるのです!!
どうか、桃子に力を貸してやってください。
何にも出やしませんが、感謝の気持ちだけは忘れないでいること
でしょう。


第18話

だって、どう考えてもおかしくないか?
桃子はパソコンの前で腕を組み、首を横に傾げた。
フランスからのメールが、三分やそこらでパソコンに送られてくるな
ど、桃子には考えられないことだった。
そんじょそこらの距離じゃないぞ。
海を渡って、いくつもの国を超えたところにある国だぞ。
どうなっていやがるんだ。
桃子はまぼろしに包まれたような気がしていた。

その謎が解明されないまま、桃子は半日を社長と共に過ごした。昼食
は、社員食堂でトンカツを食べ、午後の仕事に備えた。もちろん、昼食
も社長と一緒だ。
「そうだ、花木さん。きみのパソコンに先ほど会議資料を送っておい
た。それを十部プリントアウトしておいてくれ」
午後の会議まで、それほど時間がなかった。
すぐに秘書室に戻り、メールをチェックする。
社長からのメールはなかった。
「送受信」
と書かれたボタンを押しても、いっこうにメールが流れてこない。
社長室に電話をしてみたが、社長はメールを送っていると言い張った。
「なんで、フランスなんてあんな遠い国からのメールがすぐに届いて、
こんなに近くにいる社長のメールが届かないんだ」

「また、何か困ってるんですか?」
かわいらしいお弁当箱の蓋を閉じながら、樹里がパソコンを覗き込んで
きた。
「社長からのメールが届かなくて」
辺りを見回してみると、人は少なかった。
桃子は、一世一代のチャンスとばかりに、肝を据えてもう一度樹里に聞
くことにした。

「メールってどうなってるんですか?フランスからのメールはすぐにや
ってきて、どうしてこんなに近くから送っている社長のメールはすぐに
届かないんですか?」
半ば怒ったような口調になる。
分からないことだらけで、イライラしているのが自分でも分かるくらい
だった。
「そんなに怒らなくても…」
樹里が、口元を押さえて笑った。
「仕組みは、正直分かりません。でもね、電話だってそうでしょ?近く
とか遠くとか、世界中どこでもすぐにつながりますよね?」
世界中かどうかは分からない。
だいたい、海外に電話をしたことがない。
「はぁ」
桃子が放心したように生返事で頷くと、彼女はさらに続けた。
「だからね、場所が遠いとか近いっていうのは、関係ないんです。社長
のメールが届かない原因は分からないけど」
そう言って、彼女は、桃子のパソコンをもう一度覗き込んでマウスを動
かした。

数秒も経たないうちに、樹里は呆れた顔をして言った。
「来てますけど」
パソコンを覗き込むと、本当だ、会議資料と書かれた社長からのメール
がある。
「もう開封済みになってますよ」
開封済み?いったいそれは何だ?
「一度見たんじゃないですか?」
あぁ、そういうことか。このメールをあたしが一度開封したということか。
いや、あたしは見ちゃいない。
午前中は、社長につきっきりで、一度もこの部屋に戻ってきていないのだ。
でも、それを言っても始まらないだろう。
「見たんですかね」
曖昧に笑ってごまかすと、樹里はますます表情を険しくした。
「しっかりしてくださいね。社長の秘書なんですから」
「社長の」というところを、ものすごく強調して言う。

それにしても、おかしなことだった。
桃子はメールを見ることなどできないはずなのに、確かに、そのメール
は、開封済みになっているようだ。
見ていないメールは、黒い太文字になっていて、見たメールと区別して
表示されているのは、分かる。
桃子は当然自分では見ていないので、黒い太文字から社長のメールを捜
していた。
どうなっていやがる。
思わず舌打ちすると、樹里がまたしても冷ややかな目で桃子を見つめた。

「今日も勉強か」
会社からの帰り道、一人つぶやいてみる。
胸の辺りが、振動した。携帯電話だ。
「もしもし、桃子ちゃん?」
この世で桃子のことを桃子ちゃんと呼ぶ人は、ひとりしかいない。
桃子の母親だ。

-第19話へ続く-

    2007/05/22(火) 12:10:20| 笑@会社 | トラックバック:0
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