笑@会社

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女園秘書室-第13話-


次々に桃子に起こる試練。
有砂も樹里も、強敵な予感。
何か一発逆転劇が起こって、桃子が働きやすい環境になってくれたら
いいのですが…。それも、まだまだ先の話でしょう。
とりあえずは、パソコン!!これをきっちり覚えて、仕事をスムーズ
にできるようにすることにしましょう。


第13話

コピー機に走っていった女性も、樹里と同じく、副社長の秘書だ。
彼女は、明らかに、樹里より年上に見えた。
それでも、樹里が指示を出すということは、立場的には、樹里のほうが
上なのだろう。
女性ばかりの職場は、何があるか分からない。
しばらくは、様子を伺うことにしよう。

コピー機の女性、名前は「羽田みちる」といった。
彼女がコピーを終えると、他の秘書たちが一斉に一枚ずつ用紙を取り、
会議資料の一番上の紙を差し替えた。
「いってらっしゃい」
会議に出向くのは、社長、副社長の秘書だけ。つまり、桃子、有砂、樹
里、みちるの四人だけである。
桃子たちが出て行くのを、他の秘書たちは頭を下げて送り出す。
社長、副社長の秘書と、他の取締役の秘書とはこうも差があるのか。
自分が偉くなったような気になってはイケナイと思いつつ、顔はニヤけ
てしまう。

会議は、滞りなく、予定通り十時半に終了した。
会議終了後の社長のスケジュールは、一時間「業務」と書かれているだ
けだった。
もう一度、ポケットに突っ込んだ紙を確認する。
「社長」
会議室の一番奥に座った社長のところへ向かおうとすると、有砂に肩を
掴まれた。
「花木さん、ごめんなさい。ちょっと」
社長は、一瞬だけ顔を上げたが、またすぐに資料に手をかけている。
桃子は、有砂に摘み出されるようにして会議室を出た。
「言っておかなくては」
有砂は、高い声で一つ咳払いをした。
「社長のスケジュールの中で、業務とあるものは、実は社長の休息時間
なんです。ですから…一時間、秘書室で待機してください。そして」
一息つくと、彼女は続けて言った。
「このことは、阿東室長とわたししか知らないことですから、他言しな
いように」
有砂が、軽い笑みを浮かべる。
それは、普通の女の子のもので、「可愛い」笑顔だった。

秘書室に戻ると、珈琲の香りがする。
樹里が立ち上がり、
「ちょっと待っててくださいね」
と言い残し、秘書室を出て行く。
珈琲を手に戻ってきた。
だから、あたしは熱い飲み物は飲まないんだよ。
と、心の中では毒づいても、口にも顔にも出さない。
「いただきます」
そう言って、桃子は席に着いた。
どうも調子が狂う。
「いただきます」など、最近は食事前にも言わなくなった。
今までなら、警備員仲間が自販で買ってきてくれた飲み物を投げてもら
い、片手でキャッチして、「わりぃな」とか「もらうぜ」などと男のような
口調でお礼を言っていたあたしが、「いただきます」だって?
これが、一流への第一歩なのか?
珈琲を一口すする。
なかなかいいじゃないか。目を瞑ると、どこかの高級ホテルのラウンジ
にでもいるような気分になってくる。

「花木さん、外国語はともかく、パソコンは大丈夫でしょうね」
誰だい、あたしの休日をジャマするヤツは。
ゆっくり目を開けると、そこは、秘書室だった。
当たり前だ。桃子は、珈琲の香りに酔いしれて、いつの間にか別世界へ
飛んでしまっていたようだ。
「あぁ、ハイ」
ビクッとした瞬間、紙コップに手が当たった。
一口しか飲んでいない珈琲は、デスクの上に瞬く間に広がっていく。
「アツッ」
パソコンのキーボードの上にも飛んでいる。桃子の太ももの辺りにも飛
び散った。
「あぁ、キーボードが」
樹里が慌てふためく。自分のデスクの中から、布巾を取り出して、桃子
の足より先に、キーボードを拭きはじめた。
幸い、いまデスクの上にあるのはパソコンだけで、書類などが汚れるこ
とはなかったが、樹里は、
「昔、キーボードに珈琲をこぼして、使えなくした人がいたんです」
と、呆れ顔で言った。
「その後、クビになりましたよ」
イジワルそうな顔で笑う。
「ま、それだけが理由ではなかったですけどね」
もう一人の副社長秘書、沢渡渚が顔を上げた。

-第14話へ続く-

    2007/05/03(木) 08:00:22| 笑@会社 | トラックバック:0
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