笑@会社

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女園秘書室-第10話-


桃子には珍しく、落ち込んでいますが、
会社へ行けば、もっとたくさんの難関があるはず…。
秘書室で一緒に働く女性たちも次々と登場してきます。
どんな人と働くのだろう…。うまくやっていけるだろうか…。
そんな悩みより、いまはパソコンの悩みが優先的です。
桃子、しっかり!!
桃子秘書いよいよ出陣です。


第10話

こんなにビクビクするなんて、いつ以来だろう?
桃子は、昔の記憶を手繰り寄せた。いつまで経っても、思い出せない。
それくらい、彼女はいつも堂々と振舞ってきたのだ。
もう一度有砂を見る。彼女がどれほど有能か知らないが、負けないつも
りだ。
桃子の目は、先ほどとは違って、メラメラと燃えていた。

英語とフランス語の区別がつかないことくらい、なんなんだ。
あたしには、体力がある。力もある。社長が襲われたら、どうするん
だ?五反田さん一人では、何もできやしない。
華奢な身体が崩れ落ちるところを想像して、桃子は一人勝ったと思った。
「社長の今日のスケジュールは、五反田さんに任せてある。花木さんへ
コピーを」
阿東がそう言うと、有砂は、桃子に数枚の紙の束を手渡してきた。
一日だけのスケジュールだというのに、紙一枚以上の仕事があるのか。
病室での一件が思い出された。
これで、仕事内容などが数十枚の束になって手渡された理由が分かった。
昨日は、パソコンのことで頭がいっぱいだったが、今日からは、あの紙
を何日もかけて読まなければならないだろう。
「社長は、九時に社にみえる。それまでに全スケジュールを把握してお
くように……分かったね、花木さん」
阿東は、桃子のほうを見て言った。
分かってるさ。
「分かりました」
桃子は、心とは裏腹に自信満々に答えたのだった。

分刻みのスケジュール。
まるで、総理大臣のようだ。
いや、実際に総理大臣のスケジュールを知っているわけではないが、昔
テレビでそんな風なことをきいたような気がする。過密なスケジュール
で、いつも疲れたような顔をしている。
この日の社長のスケジュールは、夜の十時までぎっしり詰まっていた。
全てを把握することは、困難だ。
さらっと目を通してから、三枚綴りの紙を、一枚一枚四つ折にして、ス
ーツのポケットにしまう。
新しいスーツの割りに、ピチピチなサイズを購入したため、ポケットに
入りきらないスケジュール用紙は、だらしなく、外へ飛び出していた。

社長が来るまでは、席で待機だ。
なんとなく居心地が悪かった。勝手が分かっていなということもあるけ
れど、延々と鳴り響く、パソコンのカチカチという音が耳障りでならな
かった。
有砂が、パソコンを打つ手を止めた。
無言で立ち上がる。
すると、桃子の隣に座っている樹里も立ち上がった。
桃子も勢いをつけて立ち上がる。
全員が、桃子のほうを一斉に見た。
また忍び笑いが起こった。

「どうしたんですか?」
有砂が首をかしげる。
「わたしたち、役員の方々へお茶を淹れに行くんですよ」
樹里が、冷たく言い放つ。
「それとも、今日から花木さんが淹れてくれるんですか?」
二人は、笑いながら部屋を出て行く。
まだ数十分しかこの部屋にいないのに、体中にストレスが充満していく
のが手に取るように分かる。
静かに席に着いた。
ポケットから社長のスケジュール用紙を取り出し、それを見る振りをし
ながら、人を観察することにしよう。
一番奥で、全員を観察する位置に座るのは、阿東室長。
阿東の目の前の島、桃子と有砂が向かい合って座っている。
どうやら席順は、偉い人に付いている人から並んでいるようだった。
隣の福井樹里と、その向かいに座る女性は、二人いる副社長のそれぞれ
の秘書だと言っていた。
紹介されても、すぐに名前を覚えられない。
徐々に覚えていくことにしよう。

-第11話へ続く-



テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

    2007/04/24(火) 12:10:17| 笑@会社 | トラックバック:0
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