笑@会社

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No  52

第三十四話

「今日は二人でどこかへ行くんですか?おしゃれなレストランとか」
なぜか気持ち悪いほど笑顔のマンキチ。
わたしが黙っていると、夏樹ちゃんは平然と、
「合コン」
と、ひとこと言い放った。マンキチの顔がみるみるうちに曇っていく。雲ひとつない青空に、どこからか急に雨雲がわいてきたような感じだ。泣きやしないかと心配になった。けれど、意外にも曇った顔は一瞬で、その後は笑顔になって、
「ボクも行ってもいいですか?」
と言ったのだ。
「良いわけないでしょ」
夏樹ちゃんが、手で追い払うような仕草を見せる。マンキチは、いつも何も考えずに言葉を発する。わたしと夏樹ちゃんが参加する合コンに、マンキチが来て良いはずがない。まぁ、それは言い過ぎとしても、来ても意味がないことくらい分かるはずだ。女性が行くんだから、来るのは当然男性に決まっているのに。
「あっ、やっぱりくれば?」
数秒前の言葉を覆して、夏樹ちゃんがマンキチに声をかけた。
ちょうどそのとき、戸部くんと今井くんの外食組がオフィスに戻ってきた。
「ねぇ、今日の飲み会、マンキチさんが参加してもいいよね」
戸部くんに声をかける。一瞬だけ、戸部くんの顔がゆがんで見えた。まるでノックアウトを受けたボクシングの選手のように、口が曲がっていた。それでも、愛想がいいのはお手の物で、すぐに笑顔に戻って、
「もちろん、いいですよ」
と言った。わたしはというと、若者たちが何を考えているのか、さっぱり分からなくて、目をキョロキョロさせるばかりだ。自分の席に戻って、食後のコーヒーを飲みながら、パソコンから夏樹ちゃんにメールを送る。彼女は、通信販売のカタログショッピングに夢中で、パソコンを見る気配がない。
仕方なく、机と机の間のパーテーションを二回ほど足で蹴った。ようやく顔を上げた。わたしが、口ぱくで「メール」というと、やっとパソコンに触れたのだった。これ以降、わたしと夏樹ちゃんの間では、必ず机の間にあるパーテーション、いわゆる仕切りを二回足で蹴るというのが、私用メールを送ったという合図になったのだった。

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