笑@会社

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No  32

第二十三話

「若井さーん。待ってくださいよぉ」
三階には、うちを含めて三社が入居している。小さいボロビルで、防音対策などまったくとられていないため、あまり大声を出すと、ご近所迷惑だ。そんなことを微塵も考えないのが、彼である。
案の定、エレベーターホールを挟んでわが社と向かい合っている会社の受付嬢が、しかめっつらをしてこちらを睨んでいる。
大声を出すマンキチにも腹が立つけど、この受付嬢にも腹が立つ。
どうしてこんなオンボロビルに入居している会社に受付嬢が必要なのさ。
客が来ているところすら見たこともなく、彼女はいつでも精一杯口を歪めてわたしたちをチェックしているのだ。
「あ、どうもぉ。こんにちはぁ」
驚いたことに、マンキチが受付嬢に挨拶をする。
「どうも」
彼女は、少しかすれた声で、ぶっきらぼうに返事をした。
マンキチが、いつもの、自分ではイケテると思っている笑顔を彼女に向けているとき、タイミングよくエレベーターがやってきた。
すかさず乗り込んで、一階のボタンを押す。よし、閉まれ。
「閉」のボタンを連打する。扉が閉まる直前、
「あっ」
というマンキチの声を聞いた。
古いビルの古いエレベーター。
昇り降りは決してスムーズではなく、ガクンと揺れることもいつものことだ。そして、もっとも始末が悪いのは、二階で止まることだ。
二階から乗るくらいなら、階段で降りたほうがよほど早いのに。
止まるときも、一度数センチほど下に沈んでから、上にあがる。扉も、スムーズには開かない。まるで昔の民家の引き戸のように、何かにつっかえながら扉が開く。
目の前にいたのは、マンキチだった。

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