笑@会社

日々面白いことを求めて爆走中!!
No  450

ニック・バトル-あとがき-

最後までニック・バトルにお付き合いいただき、
ありがとうございました

わたしには珍しく、ちょっとシリアスな(えっ?これがシリアス?
という声が聞こえてきそうですが<笑>)物語となりました。

自分が29歳だった頃のことを思い出したり、いま29歳の友達とか、
30歳になったばかりの友達と話をすると、29歳って女の子だけじゃ
なくて、男の子にとっても、けっこう重要な年齢だったりするみ
たい。ただ、大台に乗るのが嫌というんじゃなくて、20代のうち
に築きあげておきたいことや、やっておきたいことがあって、そ
の土台の上に、さらに経験を積み重ねる30代を送るために。
そんな話が周りで多いので、今回の話を書いてみました。

平凡な日々に退屈していたけど、何も行動を起こさなかった朝子。
突然降ってわいた、悪夢に悩まされる日々。こんな日々なら、平凡
な方がよほど良かったと思いながら、何とかやる気を起こそうと
してました。

ユウナは、頭がよく仕事一筋の人間。堅物で、恋愛などとはほど
遠い生活を送っていて、人に興味がない人だと思われていました。
みんなが相談することといったら、仕事のことだけ。心を割って
話せる人もいませんでした。
朝子は、自分の身に降りかかってきた悪夢を取り払うためには、
ユウナの頭の良さが必要と思い、彼女に相談をしました。
付き合ううちに、ユウナにもたくさんの隙があり、また女性として
魅力的な人だということが分かってきます。
そして、恋をしているということも。

そして、恋人幸希とマリアの過去によって、朝子の思いは決定的に
崩壊していきました。
マリアの子供は、結局は幸希との間にできた子供ではなかったけれ
ど、幸希の軽はずみな発言や行動に失望していったのです。
幸希がそれに気付いた時には、朝子は海外行きを決め、幸希と決別。
ようやく、自分のしてきたことを反省し、そして朝子への思いが
強かったことに気付きました。

一方、マリアは、自分がついた嘘で、幸希や朝子を傷つけたことを
深く反省し、素直に謝りました。そして、本当なら口にしたくない
過去を、朝子に話しました。友達になってくれた朝子に心を開いた
のです。

湯河原は、仕事はできるけど、恋には疎く、好きになるのは早いの
ですが、その後行動に移せないタイプ。
マリアに一目ぼれをし、なんとか自分に振り向いてもらおうと、朝
子に協力を依頼します。

朝子って、すごいパワフル。
これだけのことが起こったら、普通、かなり疲れます。
いや、実際、疲れていたと思います。
でも、自分を頼ってきてくれる以上、手を抜けない。
他人のことも一生懸命考えて、一緒に悩んで、理解してくれる。
そして、朝子のもっともいいところは、嫌な相手でも、いいところ
を見つけてあげるところ。

出発前に、みんなを幸せにして、そして、自分も、完全ではないけ
れど、幸せを噛み締めて飛び立っていったことでしょう。

ずーっとずーっと、朝子が変わらず素敵な女性であり続けること、
そして、幸せになれることを祈って…
そして、わたしもそんな女性になれることを祈って…?!
バトルを終了とさせていただきます。

コメントくださった皆さん、コメントは書かなかったけど読んだよ
という皆さん。
長い間のお付き合い、ありがとうございました

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No  449

ニック・バトル-第96話(最終話)-

主人公、柚木朝子。29歳。
わたし、頑張ったかな。
自分では分からないけれど、1つ成長はしたと思う。
そして、まだまだこれから成長すると思う。
みんながいてくれたから、こうして前を向いて歩いていける。
幸希、ユウナ、マリア、湯河原、そして、関わったみんなに
感謝しつつ…行ってきます!


第96話(最終話)

一人座って搭乗を待つ。
待合室は、ゴミゴミもザワザワもしていない。静かだ。
一瞬体がビリッとした。そして、かすかに聞こえるキラキラした高音。
幸希だ。
バッグの奥底にしまいこんだ携帯電話。まだ電源を切っていなかった。
「もう振り向くなよ。前だけ見て。頑張ってこい」
メッセージにはそう書かれていた。
振り向くな。そう言われたばかりなのに、わたしは、振り返った。
ここは、搭乗者しか入れない場所。いるはずがない。
でも、さっきの手続きカウンターのあたりには、いたかもしれない。
あの声は、幻なんかじゃなく、本当に幸希がいたんだ。そう思った。
頭の中に聞こえた声に、振り返ったわたしをどこかで見ていたのかも
知れない。
携帯電話をジッと見つめる。
幸希と撮ったお気に入りの写真を画面に出してみた。

ずっと、悩みもしなかった。
仕事も恋も、取り立ててドラマチックなことがなく、平凡な日々。
ちょっぴり退屈だけど、それでいいと思ってきた。それでも、変化を
期待していた。自分から行動するのではなく、突然どこからか、誰か
がやってきてわたしを幸せに導いてくれるなんて、外部からの働きか
けを待っていた。待っているだけじゃ、変化もないし、幸せも訪れな
いよね。
そんなんだから、使者がやってきた。それがマリア。
彼女が来てから、わたしは一旦、奈落の底に突き落とされた状況に陥
った。仕事は取られ、アルバイトがやるような資料整理の仕事しかな
い。知らないところで幸希に接近されるし、幸希も彼女に好意的。
涙とイライラの日々が毎日続いた。
そんな中、いいこともあった。

先ほどデジカメで撮った写真に見入った。
ユウナの目の周りは、真っ赤だ。
「酔っ払いだ」
そういえば、ユウナはよく酔っ払っていたっけ。
一人でくすっと笑ってみる。
彼女と友達になれたこと。それはわたしにとって、大きな財産となっ
た。なんでも話せて、相談に乗ってもらえる友達が、この年齢になっ
てできたことが嬉しかった。
そして、彼女のおかげで、わたしは新たな仕事に就くことができた。
その上、英語を生かして、海外にまで行けることになった。
退屈で、どうしようもなかったわたしに、チャンスをくれたユウナ。
そして、有田課長。
2人とも、本当にお互いを好きだったんだよね。でも、お互い別れを決
断した。辛かったと思う。よく頑張ったね、ユウナ。わたしは、写真
に話しかけていた。
もっと素敵な幸せが、きっと待っているよ。

その隣で、にっこり笑っているマリアに視線を移した。
ごまかしたり、嘘をついても、幸せは手に入らない。その横に立って
いる湯河原。良い顔してる。嘘を正直に認めて、前を向いたマリア。
きっと幸せになれるよ。レイちゃんと湯河原とね。
そして、マリアには感謝してるんだ。
マリアが来なかったら、わたしは何も動かず、誰かが状況を動かして
くれるのを、今でも待っていたと思う。嫌なこともないけど、特別良
いこともない退屈な日々を送りながら。
何も考えずに、時間だけが過ぎていくだけの毎日。
何かを失うことを恐れているのに、何かを手に入れようとしていたわ
たし。
マリアや幸希と正面からぶつかった。
バトルだ。
なんて勝手に思っていた。
でも、今考えれば、わたしはマリアや幸希と戦ったわけではないのだ。
結局は、自分との戦いだったのだと思う。自分の力で人生を切り開く
ためのバトル。マリアはそのきっかけを与えてくれただけ。

その戦いに勝ったのかどうかは、いまはまだ分からない。
きっともっとずっと後になって、人生を振り返った時に、分かるのだ
と思う。
けれど、明らかに気持ちは前へ進んでいる。
20代最後の年。いろいろなことを悩み、考え、行動した。
失ったものもある。でもそれよりも大きなものを手に入れた。
そして、一度は失った幸希との関係。本当に取り戻したとき、わたし
たちは、これまで以上に良い関係が築けるだろう。

ファーストクラスとビジネスクラスの客が飛行機に案内され始めた。
デジタルカメラの電源を切る。
そして、最後にもう一度携帯電話の幸希の笑顔の写真を見つめた。
その場にいた人たちが、ざわざわとし、立ち上がる。
エコノミー席の案内も始まったようだ。
「行ってくるよ」
写真の中の幸希にそっとつぶやいて、電源のスイッチをオフにした。
携帯電話を一度だけギュッと握り締め、バッグに入れる。
窓の外に広がる青い空を見上げる。
きっと見てる。みんなも幸希も同じ空を。

この先、何が待っているか、どうなるのか分からないけれど、ひたす
ら走ってみよう。しばらくは一人だけど、大丈夫。
両手を握り締め、気合を入れたとたんに思い出した。法務部長の顔。
あ、一人じゃないや。ヤツ、いまイギリスにいるんだっけ。
せっかくの門出なのに、なんか違う。
スマートに決まらないものだね。
一人笑って、機内に乗り込んだ。

-THE END-

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No  448

ニック・バトル-第95話-

主人公、柚木朝子、29歳。
わたしたち、もうすぐ30歳。
終わりよければすべてよし!!
わたしの物語は、ここからまたスタートします。
新しい土地。新しい環境。新しいわたし。
ユウナ&マリア、離れても友達だよ。
湯河原、きっと大丈夫。マリアも湯河原のこと好きになるよ。
幸希…わたしも自分を磨いて、幸希が驚くようないい女になって
るつもり。待ってるね。


第95話

荷物を預け、航空チケットをもらう。
出発まで、あと1時間半。
10人以上の人数なので、みんなでどこかでお茶を飲むというわけにも
いかず、わたしたちは、隅っこに固まって、話し続けた。
「幸希、来なかったな」
誰かが言うのが聞こえた。
ふと顔を上げると、湯河原と目が合う。心配そうな顔。
あ……しまった。湯河原は、昨日の出来事を知らないんだったっけ。
よりを戻したというわけではないけれど、2人の間にはまだ未来がある
かも知れないということを。
大勢いる中で、その話をするわけにはいかない。
ま、いっか。いずれ分かる日が来るだろう。
わたしは、右手の親指と人差し指で丸を作り、湯河原に「大丈夫」の
合図を送った。

「じゃ、そろそろ行くかな」
フロアに放り出していた荷物を持ち上げて肩にかける。
わたしが歩き出すと、みんなも黙ってついてくる。明るく喋っている
のは、レイちゃんだけだ。
みんな、暗くならないで。だって、永遠の別れじゃないんだから。
少し歩いたところで、振り返る。
「ここでいいよ。みんな来てくれて、ありがとう」
一人ずつと握手をして、一言会話を交わす。

湯河原とは、無言だった。話すことがなかったわけじゃない。話した
いことはたくさんあったのだけど、声にならなかったのだ。会話の変
わりに、湯河原の背中を一発平手打ち。
気合入れて、頑張るんだよ。の意味を込めて。
「いてっ」
と、反射的に言って、湯河原は笑った。多分、気合の意味が分かった
のだろう。

マリアとは、外国ではそうするように、抱き合って頬を寄せる。レイ
ちゃんも、同じだ。
「あさこちゃん、離れても友達だよ」
レイちゃんの真っ直ぐできれいな眼差しに、笑顔でうなづいて、彼女
とマリアの手をギュッと握った。

そして、最後にユウナ。明らかに、顔が歪んでいる。泣くのを精一杯
こらえているようだ。
わたしは、泣かないと決めていた。誰かが泣いたとしても、良い笑顔
でお別れしようと思っていた。でも、できなかった。ユウナの顔を見
たら、わたしも泣き出しそうになった。
顔を見ていられなかった。ユウナの背中に手を回し、抱き合う。体が
震えている。そして、彼女は、わたしの肩に顔を埋めた。薄手のシャ
ツが濡れていくのが分かる。
背中をトントンと軽く叩くと、ユウナも同じようにしてくれた。
「頑張ったよね、わたしたち」
ユウナは黙ってうなづく。
「今日からまた新しく始まるんだよ。頑張ろうね」
ユウナは何回もうなづいた。
「ありがとう」
かすれた声が耳に届いた。
まだ泣きやめないユウナからそっと離れる。
「ユウナちゃん、泣かないで。友達だから、大丈夫だよ」
レイちゃんが、ユウナを励ましている。
その場の雰囲気が、一気に明るくなった。
ユウナも笑った。良かった。笑顔を覚えていたいもん。

「あ、そうだ。忘れてた」
わたしは、バッグからデジタルカメラを取り出した。近くを通った男
性に声をかける。
「写真、1枚だけ」
すると、全員がサッとわたしを囲んだ。
「朝子のばか。泣く前にしてくれれば良かったのに」
ユウナが言って、みんなが笑う。
この1枚があれば、辛いことがあっても乗り越えられそう。

「みんな、ありがとう。元気でね」
大きく手を振って、わたしは前に向かって歩き出した。
「頑張れよー」「頑張ってねー」
みんなの声援を背中で受けながら、歩いていく。
「朝子、頑張れ」
声援の中に、聞き覚えのある声が響いた。
振り返る。みんなの中に、幸希を捜した。いない。その横にも、その
後ろにも。幻聴?そんなはずはない。確かに、聞こえたのだ。
それでも、姿は見えなかった。
もう一度、笑顔でみんなに手を振って、歩き出す。

-第96話へ続く-

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No  447

ニック・バトル-第94話-

主人公、柚木朝子、29歳。
わたしたち、もうすぐ30歳。
終わりよければすべてよし!!
わたしの物語は、ここからまたスタートします。
新しい土地。新しい環境。新しいわたし。
ユウナ&マリア、離れても友達だよ。
湯河原、きっと大丈夫。マリアも湯河原のこと好きになるよ。
幸希…わたしも自分を磨いて、幸希が驚くようないい女になって
るつもり。待ってるね。


第94話

明けて土曜日。
いよいよ出発の日がやってきた。
レイちゃんは、遠足みたいだと楽しそうな様子だ。
空港が近づくと、飛行機が間近に飛んでいるのが見える。
「レイもあれに乗ったよ。ね、ママ」
「そうだね。たくさん乗ったね」
マリアがむかしを懐かしむように、窓の外に目を向ける。
「今度、パパも一緒に乗る」
「そうだね」
マリアは、何にも考えずに、ただ返事をしたんだと思う。でも、レイ
ちゃんの頭の中には、パパの顔がはっきり浮かんでいたようだ。
「ゆがわら、ゆがわら」
座席に座ったまま、首を左右に振り、メロディをつけて楽しそうに歌
っている。
「ちょーっと、レイ」
マリアは、レイちゃんより大きな声を出す。
近くに座っている人の視線が集まって、大人3人はうつむいた。
レイちゃんだけが、楽しそうに歌っている。
「だって、ママ、ゆがわらがパパになってくれたらいいねって、レイ
に言ったよ」
わたしとユウナは、笑いを噛み殺すのに精一杯だった。
そんなところまで、気持ちが進んでいるんだね。
マリアは、レイちゃんの口を押さえて、本気で叱っている。
「レイ、静かにしてなさい」
耳まで真っ赤なのは、怒っているからじゃないよね。

空港は、思った以上に混雑していた。
「ママの手を離さないでね」
マリアが、腰をかがめて、レイちゃんに言い聞かせる。
私生活ではこうやってママとして頑張っているんだね。
わたし、尊敬するよ。マリアのこと。
親子のほほえましい姿。そして、その隣に湯河原。うーん。
2人から目を逸らして、想像してみる。想像して…あれ?
想像するまでもなく、目の前には本物の湯河原が立っていた。
「どうしたの、湯河原?」
「俺だけじゃないよ」
ふと気付けば、同期に囲まれていた。
ママから目を離したレイちゃんが、湯河原に気付く。
「あー、パパ」
マリアに子供がいることすら知らないみんな。湯河原を見て、パパと
飛びついたレイちゃんを、唖然とした顔で見つめている。
もちろん、パパと呼ばれた湯河原は、1番驚いた顔でレイちゃんを眺め
ていた。
湯河原の顔ってば。
事情を知っているわたしとユウナは、顔を見合わせて笑った。
湯河原のことは抜きにして、マリアが簡単に事情を説明する。
レイちゃんは、一気にみんなのアイドルになった。あの物怖じしない
明るい性格だから、みんなに可愛がってもらえるだろう。

レイちゃんとマリアを囲む同期を、少し後ろから眺める。
みんな、見送りに来てくれたんだね。
ありがとう。

-第95話へ続く-


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No  446

ニック・バトル-第93話-

主人公、柚木朝子、29歳。
わたしたち、もうすぐ30歳。
終わりよければすべてよし!!
わたしの物語は、ここからまたスタートします。
新しい土地。新しい環境。新しいわたし。
ユウナ&マリア、離れても友達だよ。
湯河原、きっと大丈夫。マリアも湯河原のこと好きになるよ。
幸希…わたしも自分を磨いて、幸希が驚くようないい女になって
るつもり。待ってるね。


第93話

高鳴る鼓動を抑えようと、胸の上に手を置いた。
幸希からの言葉。
それは、いままで付き合ってきた間に、いつか聞きたいと思った言葉
だった。

マンションのロビーの、きらびやかな照明のもと、一旦ソファに座り
込んだ。これまでのことを振り返ってみる。
マリアが来てから、状況は悪いほうへと動いていった。自分ではどう
することもできなくて、泣いたり怒ったりした。
「もう、いいや」
すべてのことを諦めようとしたこともあった。
ユウナがわたしを救ってくれた。
有田課長も、わたしのために動いてくれた。
新しいことに夢中になって、すべてを捨てて、忘れようとした。
それで良いと思っていた。
でも、本当にわたしの人生に必要なものは、やっぱり捨てられなかっ
たよ、幸希。
「人生すべてが運だ」なんて言ってた彼も、変わろうとしている。
イギリス行きを決断しなければ、こうはなってなかっただろう。
だから、わたしは、明日出発することを後悔しない。

何回も深呼吸をして、ユウナの部屋へ戻る。
2人は笑顔で出迎えてくれた。そして、わたしが床に座るなり、顔を見
合わせる。
ユウナが、
「せーの」
と言うと、二人は声を合わせて叫んだ。
「こーき、待ってるー」
二人のからかいに火照った顔を、どこからか入ってくる風が撫でていく。
ベランダに通じる窓のカーテンの端っこが、ひらひらと揺れている。
「あー、もう。見てたでしょ」
窓を開けてベランダに出ると、サンダルと靴が一足ずつ。
そして、下を覗くと、先ほどまで幸希と一緒に立っていた場所が、よ
く見えた。

「惜しかったなぁ。絶対によりを戻して、朝子は海外行くのをやめる
なんて言って、二人はラブラブっていうのを期待してたんだけど」
ユウナの言葉に、マリアもうなづいた。
「でも、待ってるーからいいじゃん。よりは戻ったってことで」
「待ってるー」のところだけ、わたしの真似をする。
「レイちゃんが、目を覚ましちゃうよっ」
そう言って、横目で睨むと、さすがに母親。おとなしくなった。
それでも、くすくすと笑い続ける2人。
「ねぇ、これってハッピーエンド?」
「ハッピーエンド以外のなにものでもないよ」
わたしの問いかけに、2人が自信満々に答えてくれた。

-第94話へ続く-
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No  445

ニック・バトル-第92話-

主人公、柚木朝子、29歳。
わたしたち、もうすぐ30歳。
終わりよければすべてよし!!
わたしの物語は、ここからまたスタートします。
新しい土地。新しい環境。新しいわたし。
ユウナ&マリア、離れても友達だよ。
湯河原、きっと大丈夫。マリアも湯河原のこと好きになるよ。
幸希…幸希に言いたい言葉は↓


第92話

「いま、マンションの外にいるんだ。ちょっとだけでいい。出て来れ
ない?」
それに対して、思わず言ってしまう一言。
「相変わらず、突然やってくるのね」
「あ、ゴメン」
幸希は、小さい声で謝る。
せっかくお風呂に入ったのに、わたしは今日の服を再び身につけた。
髪を乾かし部屋に戻ると、怪訝そうな顔の2人。
それはそうだ。パジャマではなく、また服を着て戻ってきたのだから。
「ちょっと、ね。外出てくる。えっと、なんか来たの。幸希が」
日本語が不自由になっている。
マリアがゲラゲラと笑う。
「朝子、ひどいよ。日本語」
「いいよ、帰ってこなくても」
とユウナ。
「ばかー」
わたしは、座っている2人の頭を叩くと、外へと急いだ。

こんなに幸希に会いたいと思ったのは久しぶりのことだった。
急いで外に出て、幸希を見つけると、駆け寄った。
「ごめんな。急で、ごめん」
本当にすまなそうな顔をする。
「いいよ。でもどうしたの?」
まだ夜は10時を回った早い時間だったけれど、閑静な住宅街は、人通
りがほとんどない。
マンションの入り口から少し離れた誰も通らない道路の脇に、わたし
たちは立っている。
「どうしても、会いたくて。最後に2人で会いたかった」
心臓が大きな音を立てる。目には涙がじわじわと浮かんでくる。
こんな言葉をかけてもらうのは久しぶりだった。
「朝子とは、長かったし。俺にとっては、特別な存在だったから」
なにそれ。今ごろそんな風に言葉にしてもらっても、わたし、明日日
本を発つんだよ。
本当は嬉しいのに、それを表現できずに、わたしはうつむいた。
「朝子に別れようって言われてから、ずっと悩んだり、考えたりして
た。俺はこんなに好きなのに、どうして朝子は別れようっていうんだ
ろうって。若月さんのことが解決して、ちゃんと話し合えば、朝子は
戻ってきてくれるって思ってた」
幸希の目を見る。わずかに潤んでいるようだった。
「でも、朝子は俺と別れて、新しい道に進むことを選んだよね」
わたしは黙ってうなづく。

しばらく沈黙が流れる。
幸希の深呼吸しているわずかな音さえ、耳に届くような静けさだ。
わたしの鼓動も聞こえているのだろうか。
幸希を見上げることなく、ちょうど目の前の喉の辺りに視線を定めて、
次の言葉を待った。
「この前も言ったけど、俺、変わってみせる。そして……」
そして?
「お前を迎えにいく」
緊張していたのか、声が少しだけ上ずって、慌てて咳払いをする幸希。
思ってもみなかった言葉に、一瞬のうちに涙を流したわたし。
「いや……待っててくれとは言わないよ。朝子がいい人を見つけたら、
それは仕方ないって思ってる。でも、もし変わった俺を見て、朝子が
この人ならって思えたら」
一段と深く深呼吸をして、彼は言った。
「結婚してほしい」

それだけ言いたかった。
最後にそう言い残し、幸希は、わたしが何か言う間も与えず、駅のあ
る方へ歩き出した。
例え、「何か言って」といわれても、すぐには何も言えなかっただろ
う。それだけ、わたしは呆然としていた。幸希の背中を見つめる。
ずっと長い間見てきた背中。歩き方。いまここに、道路を埋め尽くす
くらいたくさんの人が歩いていても、わたしは、すぐに彼を見つけ出
せる自信がある。
それだけ幸希をずっと見てきた。

「こーき」
精一杯の声で呼びかける。
その声は、そこら中の壁に当たってこだまし、暗い夜空に吸い込まれ
ていった。
幸希がゆっくりと振り向く。
「待ってる」
それが、本当のわたしの正直な気持ち。
わたしたちの距離は、いまは縮まらない。物理的にも精神的にもだ。
わたしから背を向けよう。
軽く手を振ると、幸希がそれに応えるように、手を挙げる。それを見
届けて、わたしは、ゆっくりと背を向けて、マンションに戻った。

-第93話へ続く-
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No  444

ニック・バトル-第91話-

主人公、柚木朝子、29歳。
わたしたち、もうすぐ30歳。
この年齢になって、新たなスタートを切ることは、とっても
勇気のいること。でも、新しい環境に身を置いて、もう一度
一から頑張ってみるのも悪くない。
ようやく前進する気持ちになった、ユウナ。わたしはやっぱり
彼女を尊敬する。
どうなっちゃうんだろう?なんて、グダグダ悩んでいた日々は
もう遠い昔。
スタートが肝心だよ。みんな一緒に頑張ろう。


第91話

「いらっしゃーい」
わたしは、マリアとレイちゃん、この部屋の住人であるユウナを出迎
えた。
夕飯の支度がちょうど終わったときだった。
「うわー、すごい。ごちそう」
わたしが作った夕飯を見て、レイちゃんが嬉しそうに叫ぶ。
それもそのはず。
2種類のパスタ、から揚げ、ポテトサラダ、ピザなど、子供が喜びそう
なものばかりを作ったのだ。
「ユウナちゃん、ケーキ、ケーキ」
レイちゃんがユウナの腕を取り、ぶんぶんと揺らす。
もうユウナになついているようだ。
「レイちゃん、あのごちそう食べたあとだからね」
ユウナが、レイちゃんの頭を撫でる。
むかしのユウナからは想像できないほど優しく、穏やかな笑顔。
気持ちが和らぐ。

「ママ、もうレイ眠い」
ご飯を大量に食べ、ホールで買ってきたケーキも完食すると、食事中
ずっとはしゃいでいたレイちゃんが、目をこすり始めた。
「たくさん食べたもんね」
わたしがお腹を触ると、半分閉じかかった目を大きく開けて、笑い転
げる。
くすぐったいようで、部屋の中を逃げ回る。追いかける大人3人。
レイちゃんが、何かにつまづいて転んだところで、追いかけっこは終了。
マリアが寝かせに隣の部屋へ行っている間に、わたしたちは、片付け
を始める。
「朝子、珈琲淹れてくれない?」
レイちゃんが飲めないからと、ケーキの時には紅茶を出してくれたユ
ウナ。
子供が、自分だけが違うものを与えられるのを嫌がるということをよ
く知っている。
不思議だな。あれだけ仕事人間にしか見えなかったユウナだけど、本
当は、誰よりも人の気持ちが分かってる。
これから、いろんな人と関わっていけば、ものすごく良い女になれる
ね。

「2人とも、レイのこと、ありがとね」
レイちゃんが眠るまで、付き添っていたマリアが戻ってくる。
「じゃ、大人の時間」
ユウナが言う。キッチンから珈琲のいい香りが漂ってきた。
白地にブルーの小花が描かれたカップ。
「いいね、これ」
わたしが言うと、
「やっぱりね、年相応に良いものが欲しいよね。安いものをたくさん
より、良いものを少しがいいな」
ユウナが言って、わたしたちはうなづく。
珈琲を一口飲んで、マリアが口を開いた。
「恋愛の相手も、そうだよね。まぁ好きならいいかっていう相手より、
本当にこの人って人を選ばないと」
え…、それはちょっと。合ってはいるんだけど、それは、いつでもそ
うありたいじゃない?若いときでも、年を取ってもね。
反応がないのを見て、マリアはちょっとだけ首を傾げて続けた。
「わたしね、この前湯河原と遊びに行ったの」
わざとらしく驚くわたしと、本当に驚いたユウナ。
わたしたちの顔を見て、マリアは大笑いする。
「そんなに変?」
「変じゃないけど、どうして湯河原?」
ユウナの疑問はもっともだ。同期として接してきて7年間、湯河原に彼
女がいたことはない。悪い奴ではないけれど、人が良すぎて恋愛の対
象にはならないのだ。
「すごく親切だし、いろいろ気遣ってくれて。お礼のつもりで、わた
しが誘ったの。レイも連れてね」
あ…本当に?湯河原は、レイちゃんを見てどう思っただろう。
「ある程度の話はしたんだ。そしたら、泣いてるの。大変だったねっ
て。どんどん頼っていいからねって言われた」
心なしか、マリアの頬が赤くなる。
「好きになったでしょ?」
ユウナが言うと、マリアはさらに顔を赤くさせて、
「まだです」
と、頬を膨らませながら笑った。
でもね、話しているときの嬉しそうな顔。あれは、気持ちが傾いてる
と思うな。

少しして、一人ずつお風呂に入った。
明日、空港に遅れないように、やらなければいけないことを先にやっ
てしまおうというわけだ。
「ねぇ、朝子。電話鳴ってる」
お風呂からあがって、バスタオルで体を拭いていると、ユウナが脱衣
所に入ってきた。
キラキラした音。久しぶりに聴く着信音。
ユウナと目が合う。
「早く出てあげなよ。何回も鳴ってたから」
幸希からだということが分かっているのだろう。
携帯電話に水滴がつき始める。それをタオルで拭きながら、わたしは
ゆっくりと通話ボタンを押した。

-第92話へ続く-
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